睡眠と子育て
子どもの睡眠障害を知っていますか?状態や対処法をご紹介 Vol.15
子どもの眠りについて悩みを抱えている保護者の方はいませんか?
子どもは、ある程度の年齢になると、一度寝かしつければそう簡単には起きることなく朝までぐっすり眠ります。
ですが、中には寝かしつけをしてもなかなか寝入らない、途中で起きてしまう、驚いて大声や叫び声をあげる、寝ぼけて部屋の中を歩き回る、睡眠時無呼吸症候群のため日中眠りたがる、朝起きられないなど、心配な行動のあるお子さんがいます。
このような状態のお子さんをお持ちの保護者も、ゆっくり眠れず大変な思いをされているでしょう。
このような状態を大きくは「睡眠障害」と言い、大人の睡眠障害と同じような状況を抱えます。また、保護者も子どもの様子が心配でよく眠れていないことがほとんどでしょう。
子どもの「睡眠障害」とはどのような症状があり、保護者はどのような対処ができるのでしょうか。また、「睡眠障害」は完治するのでしょうか。詳しくお話しましょう。
子どもの「睡眠障害」とは?
子どもでも、生活スタイルや睡眠習慣の改善だけでは対処できないさまざまな睡眠障害がみられます。
その代表は「睡眠時無呼吸症候群」です。
小児の2%で「睡眠時無呼吸症候群」がみられます。重度の場合には日中の集中困難や学習能力の低下がみられますから要注意です。そのほか、「睡眠時遊行症(夢遊病)」「睡眠時驚愕症(夜驚)」「夜尿症」「不眠症」「概日リズム睡眠障害」「ムズムズ脚症候群」「アトピー性皮膚炎の痒みによる不眠」など、大人と同様にさまざまな「睡眠障害」がみられます。
寝ている途中に呼吸が止まってしまう、眠りの質が悪い、寝入りばなや夜間に身体の異常な動きがある、日中の眠気が強すぎる、このような症状が1か月以上にわたって続くときにはかかりつけの小児科医に相談しましょう。
生活習慣や生活リズムが時代と共に変わり、子どもの生活時間帯も大人と同様になりつつあります。生活リズムを整え、寝る時間・起きる時間を守らせても「夜なかなか眠らない」「朝なかなか起きない」ことが改善しないようであったり、そのほかの困りごとがあるのであれば「子どもの睡眠障害」かもしれません。
睡眠障害の詳しい状況とはどのようなことなのでしょうか。子どもに多い代表的な症状を詳しく見ていきましょう。
①「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)
「睡眠時無呼吸症候群」は、眠り出すと呼吸が止まってしまう病気です。
呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めますが、眠り出すとまた止まってしまいます。これを一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなり、日中に強い眠気が出現します。
酸素濃度が下がるため、これを補うために心臓の働きが強まり、「高血圧」となります。
酸素濃度の低下により「動脈硬化」も進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。
さらに睡眠不足によるストレスにより、「血糖値」や「コレステロール値」が高くなり、さまざまな「生活習慣病」や「メタボリック・シンドローム」がひきおこされます。1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上出現するような中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心筋梗塞・脳梗塞・生活習慣病・眠気による事故などを引き起こし、死亡率が非常に高くなるため、すぐに治療が必要です。
ひどいイビキ、睡眠中の呼吸停止がある場合には速やかに専門の医療機関で検査・治療を受けることが大切です。
小さな子どもや小学生でも、寝ているときにイビキをすることがあります。耳鼻科や耳鼻咽喉科へかかり、睡眠時無呼吸症候群になっていないかを診てもらうと安心するでしょう。
また、「無呼吸症候群」であれば早めの治療をおすすめします。
②「睡眠時遊行症」や「夜驚症」
ねぼけは睡眠障害のひとつで「睡眠時遊行症」と「睡眠時驚愕症」という症状や行動があります。
「睡眠時遊行症」は、起きあがって寝床の上に座るだけの行動や、ドアや外に向かって歩き出すものまでさまざまな行動があります。
「睡眠時驚愕症」は叫び声が特徴で、眼を見開き恐怖に引きつる顔、多量の汗、荒い呼吸などを伴います。子どもの場合は、遺伝の影響を受けているもの、通常の発達に伴う一過性のもの、あるいは心理的ストレスによるものなどがあると考えられています。
なだめるとかえって興奮することが多いので、危険のないように見守ることで対応します。多くは思春期になると消失します。
「夜驚症」は、その行動をやめさせようとせず危険がないか見守るようにしましょう。
わが子がそのような行動を取ると、大変驚き保護者は慌ててしまうかもしれません。ですが。年齢と共に落ち着いてくるようです。心配なときは小児科に相談をしましょう。
③「夜尿症」
子どものおねしょ(夜尿症)は、「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」と定義されます。
7歳児における夜尿症の有病率(病気をもっている人の割合)は10%程度とされ、その後は年間15%ずつ自然に治るとされますが、0.5~数%は夜尿が解消しないまま成人に移行するといわれています。
生活指導をはじめとする治療介入により、自然経過に比べて治癒率を2〜3倍、高めることができ、治癒までの期間が短縮するといわれています。
小学校に入っても夜尿症が治らない場合は、小児科あるいは泌尿器科を受診することをお勧めします。夜尿症患児は夜尿のない対象の子どもと比較して、有意に自尊心が低いとの報告もあり、夜尿症が改善したお子様では自尊心の回復が見られたとの海外の報告もあります。
ですが、夜尿症は親の育て方や子どもの性格の問題ではありません。その原因としては睡眠中に膀胱がいっぱいになっても、尿意で目をさますことができないという覚醒障害を基礎としています。
この覚醒障害に加えて、睡眠中の膀胱の働きが未熟である(膀胱の容量が小さい、ある程度膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮してしまう、など)ことや夜間尿量が多い(夜間多尿)ことが重なると発生します。
「夜尿症」と診断があった場合の治療方法としては、生活指導や行動療法をし、効果が乏しい場合には抗利尿ホルモン剤投薬または夜尿アラーム療法(決まった時間に目覚めるようにアラームをかける)を追加します。
生活指導や行動療法は、眠る前に必ずトイレに行くこと、夜間の水分摂取の制限などもあります。
ほとんどの子どもは成人するまでに完治しますが、15歳以上で1%〜2%の頻度で持続するともいわれています。
特に毎晩夜尿をする場合など重症例は治りにくいため、早めの受診をおすすめします。
子どもの「睡眠障害」が及ぼす影響とは?
大人にも子どもにも起きることがある「睡眠障害」。成長期の子どもにどのような影響があるのでしょうか。
例えば、安定した睡眠が得られないことで脳がきちんと休まらないことで脳機能を低下させ、記憶力・判断力・注意力・意欲が低下します。
また、自律神経機能に乱れが生じ、体調不良になったり体力が低下したりします。
体調不良によって思うように日常生活が送れない、子どもらしくはつらつと過ごせないことは、大変なストレスとなります。
また、友達に比べるとできないことが多いと感じたり、結果的に自己評価が下がったり、自信を失ってしまったりすることもあります。
子どもの睡眠状態について、少しでも不安があるときは早めに医療機関へ相談しましょう。
発達障害かも?多角的な見方をしてくれる病院へ
子どもの「睡眠障害」の原因のひとつとして、「発達障害」や「自閉症」をはじめとする障害があると考えられることもあります。
「自閉スペクトラム症」、「ADHD/注意欠如・多動症」、「発達性協調運動症」、「限局性学習症」など様々な障害がありますが、障害があるのかないのかをはっきりと診断できるのはお医者さんだけです。
子ども相談センターや、保健所、看護師、助産師、教師や保育士などは、診断ができません。睡眠について心配を抱えている場合は、障害があるかもしれないという一面を考慮してくれる詳しい医療機関で発達検査をし、診断をしていただきましょう。
睡眠は成長期の大切な時間! 気になるときはすぐに受診を
子どもの「睡眠障害」とはどのような状態を指すのか、その対処法や医療機関を受診する目安についてご紹介をしました。
人間にとって大切な睡眠を、家族そろって良質なものにするために、少しでもお悩みの際は医療機関や専門機関に相談しましょう。
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筆者プロフィール
炭本 まみ