睡眠と子育て
小学生の睡眠は成長に不可欠!睡眠不足が引き起こす問題と解決策は?
小学校に入学したての低学年のうちはまだゆっくりとした生活リズムで過ごしているかもしれませんが、3年生くらいから習い事や少年団などがスタートしたり、塾に通いだす子どももいるでしょう。
学校の時間割も6時間目まであるのが普通になっていきます。
放課後の過ごし方がぐっと変わってくる忙しい小学生。お子さんは何時ごろに眠っているでしょうか。
厚生労働省のデータによると、低学年の平均的な就寝時間は21時ごろが一番多く、高学年になるにつれ22時過ぎが増えていきます。
時代の流れや社会の変化によって、小学生の就寝時間が遅くなり睡眠時間が減っている中、子ども達の体調不良や睡眠障害が増えてきたり、朝なかなか起きられず登校が億劫になる子どももいます。
小学生に必要な睡眠時間は9時間から11時間と言われていますが、皆さんのお子さんはいかがでしょうか。
睡眠不足の子どもにどのような影響があるのか、また、早寝・早起きをさせるためにはどのような方法があるのか、詳しくお話します。
小学生の睡眠時間は?理想と現実
現代の小学生は昔のように、ランドセルを投げ出して日が暮れるまで遊んでいた時代とは違い、宿題や塾通い・習い事などで大変忙しくなりました。
また、保護者の仕事も多様化し、夕飯や寝る時間が遅くなることも日常でしょう。
保護者も帰宅後、食事の用意から子どもが眠るまでの間は休む時間もなく動き続け、仕事が終わっても家事や育児に追われて疲れやストレスも溜まっているかもしれません。
厚生労働省のデータによると、小学生に必要な睡眠時間は9時間から11時間と言われていますが、実際は7時間から8時間と短いことがわかっています。
夜寝る時間が遅くなる、朝起きられなくなる、朝食を摂る時間が無くなる、などの理由から疲れが溜まった子どもが保健室へ行くことも増えているようです。
また、朝起きられないことから遅刻が嫌で欠席してしまい、不登校につながる子どもも増えています。
睡眠不足が原因となるさまざまな問題とは?
子どもの睡眠不足も、大人の睡眠不足と同じで、体や心に様々な影響が現れます。大人は寝不足であっても仕事や家事に勤しまなければなりませんが、子どもは自分の体調や精神状態を顕著に表すことでしょう。
どんな様子が見られるのでしょうか。
朝食摂る時間がなく午前中のエネルギー源が補完できない・食欲がない
保護者がいくら起こしてもなかなか起きることができない……。睡眠不足の典型ですね。
約束をした寝る時間に寝室に行ったり、ベッドに入ったりしても、それからなかなか眠れず遅くまで起きていた可能性もあります。
なかなか起きることができず、登校時間ぎりぎりになってやっと起きても、その日の時間割を揃えていなかったり、身支度に時間がかかったりして、朝食を摂る時間がなく食べないまま登校していいる子どもも少なくありません。
また、朝食を摂る時間があっても、睡眠不足のため体が覚醒しておらず、食欲が湧かないため食べられない子どももいるでしょう。
そのまま登校すると、給食までの時間の4時間余りを空腹で過ごすことになり、エネルギー源が不足したまま活動することになり、子どもの体には大変な負担がかかります。
集中力が落ち、学力・知的能力が下がる
睡眠不足やエネルギー不足は体だけではなく脳の働きも低下させます。
先生の話に集中できずぼんやりとしていたり指示を聞き逃していたりし、注意を受けることが増えるかもしれません。
学習がわからなくなってきたり、注意を受けることが増えたりすることで、自分に自信がなくなり、学校へ行くことが嫌になったり、勉強が嫌いになり授業が苦痛になってしまう子もいるでしょう。
イライラして、友達や先生・保護者とのトラブルが増える
睡眠不足は、心も体も休息をしていない状態で日中の活動をすることになります。
疲れが溜まり、いつもできることができなかったり、ちょっとしたことでイライラしたり、うまくいかないことを友達や周囲の大人へ当たり散らす様子が見られるかもしれません。
原因のわからない友達や先生は、イライラしたりケンカやトラブルが多くなる子どもに対し、注意したり問題があると判断したりし、学校で過ごしにくくなるかもしれません。
保護者も、反抗期と捉えたり態度や言動に対して叱ったりするかもしれません。
子ども自身も理由がわからず、辛い思いをするでしょう。
肥満・生活習慣病・睡眠障害などを発病することも
睡眠不足は日中の眠気や意欲低下・記憶力減退など精神機能の低下を引き起こすだけではなく、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすことが知られています。
一例を挙げれば、健康な人でも一日10時間たっぷりと眠った日に比較して、寝不足(4時間睡眠)をたった二日間続けただけで食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌は減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大することが分かっています。
ごくわずかの寝不足によって私たちの食行動までも影響を受けるのです。
実際に慢性的な寝不足状態にある人は糖尿病や心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患といった生活習慣病に罹りやすいことが明らかになっています。
また、慢性敵に睡眠不足のひともまた、「交感神経の緊張」「糖質コルチコイド(血糖を上昇させる)の過剰分泌」「睡眠時間の短縮」「うつ状態による活動性の低下」など多くの生活習慣病リスクを抱えています。
入眠困難や中途覚醒・早朝覚醒など不眠症状のある人では良眠している人に比較して糖尿病になるリスクが1.5〜2倍になることが知られています。
日本は世界一睡眠時間が短いと言われています。
小学生には9時間から10時間の睡眠が必要です。
睡眠不足には、様々なリスクが隠れているのです。
起きられないことから情緒不安定になったり不登校を引き起こす
先ほどのお話と通じるのですが、生活リズムの崩れによって朝起きられないことが続くと、学校に遅刻したり休んだりすることが増えるかもしれません。
起きる時間にずれが生じ、それを繰り返すことで、早起きをすることがむずかしくなっていきます。早く起きるという体内時計がくるってしまうからです。
遅刻や欠席が増えると、なかなか学校へ行きにくくなります。それでも無理に登校させようとしたり、逆に起きられないことが理由で欠席をさせることが続くと、不登校につながってしまいます。
一度崩れた生活リズムや体内時計を元に戻すのは、大変なことです。周囲がいくら言っても、本人の心と体が起きようとしなければ、むずかしいのです。
眠る前の過ごし方を見直し、家族みんなが同じ時間に眠ろう
睡眠不足や生活リズム・体内時計の変化は、子どもの体や心に様々な影響を与えることをお話しました。
子どもに良質な睡眠をさせるために、家庭でできることはどんなことでしょうか。
夜の家事は翌朝にし、家族一斉に眠ろう
保護者が働いている場合、平日の帰宅後は大変忙しい時間帯ですね。食事の支度、お風呂、後片付け、洗濯や乾いた洗濯物をたたんでしまったりなどたくさんの家事をしなければなりません。
ですが、家事は最低限にとどめ、翌朝少し早く起きて行うか、週末や休日にまとめて行うようにしてみてはいかがでしょうか。
そうすることで、子どもと向き合う時間が増えたり、早く寝かせる準備ができたりします。
また、電気を消して家族が一斉に同じ時間に眠るようにするのも効果的。
小学生になったら自分の部屋があるかもしれませんが、家の中の物音やテレビの音などが聞こえなければ、自然と眠りにつけるようになるでしょう。
子どもの寝る前のルーティンを決めよう
眠る前は、お風呂・着替え・歯磨き・明日の用意など、眠る前にすべきことを毎日同じにしましょう。
そうすることで、体も心も少しずつ寝る準備ができるようになり、布団に入ると眠気をおぼえるようになっていきます。
小学生ならもう寝かしつけなどしなくても一人で眠るようになりますが、眠る前に10分だけ保護者と会話をするようにする、明日の予定について話すなど、そういったルーティーンも大きくなった子どもには良いでしょう。
眠る前のテレビ・タブレット・パソコン・スマホはやめよう
眠る間際までテレビやスマホなどのデジタル機器を見ていると、脳に刺激が届き興奮状態になります。興奮状態のまま布団に入ってもなかなか眠ることはできません。
人は「日光を浴びると覚醒し、夜になると眠くなる」という睡眠リズムがあり、夜は暗くなるので「メラトニン」というホルモンが増え、眠りを誘います。
メラトニンは、強い光を浴びると減ってしまうので、デジタル機器の光が脳に錯覚を起こしてしまい、昼間と勘違いしてしまい眠れなくなるのです。
眠るぎりぎりまでデジタル機器を使用することは、睡眠障害にもつながると、厚生労働省では警鐘を鳴らしています。
子どもの眠る部屋には、デジタル機器を持ち込ませないように注意しましょう。
小学生には睡眠不足にならないよう家族が配慮しよう
小学生の睡眠についての理想と現実、そして睡眠不足が引き起こす様々な影響と対策をお話しました。
睡眠をしっかり取るからこそ、元気で健康な心と体が育ちます。毎日忙しい保護者には子どもの睡眠時間について考え実行することはむずかしいかもしれません。
なんとか工夫して、心身ともに一番成長する時期を大切にしてあげたいですね。
筆者プロフィール
炭本 まみ